死のトライアスロン

どうも、スタッフの濱口です。

突然ですが、「死のトライアスロン」ってご存知ですか?
トライアスロンは距離によってショート・ディスタンス(短距離)、ロング・ディスタンス(長距離)、
アイアンマン・ディスタンスの3種類があります。
オリンピックに採用されたショート・ディスタンスのレースは、
スイム(水泳)1.5km・バイク(自転車)40km・ラン(長距離走)10km、
合計51.5kmの距離だそうです。
それに対し「死のトライアスロン」は、ラン20km・バイク40km・スイム4.0km、合計64kmです。
距離的にはたいしたことないです。ではどこが「死の・・・」かといえば・・・

やってみればわかります。
ラン20km・バイク40kmでふらふらになったところでスイム4.0km。
そりゃあ力尽きて沈んでいく選手もいることでしょう。

もちろんこれはフィクションです。
元ネタは、とある4コマ漫画ですが現在手元に資料がないので距離は適当ですが、
キモは「距離」ではなく「順番」なので問題はないはずです。
これはフィクションですが、実際にスイムから始める理由はおそらく上記のような事態を
避けるためだと思われます。

ひょっとすると最後がランなのも同じ理由かもしれません。
ふらふらになって走っている光景は箱根駅伝の中継で毎年のように見ますが、
ふらふらになった原因、たとえばそれが熱中症ならば危険は危険ですが、
それを別にすれば、その危険は転んだことによる打撲、擦過傷くらいです。
それがバイク(自転車)で転んだら、もっとひどいことになります。
骨折するかもしれません。
スイムの途中でふらふらになったら・・・
後になるほどふらふらになる確率が高くなりますから、後になるほどふらふらになっても危険が少ない
ようにする。すると現在の順番、スイム→バイク→ランになります。

さて、似た話をもう1つ。
ネタ元はこちらです。
http://www.dipro.co.jp/news/2003/01/index.html
http://www.appleseeds.org/Big-Rocks_Covey.htm
要約すると

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瓶に石をいっぱいに入れても砂利の入る余裕はある。
砂利をいっぱいになるまで詰め込んでも砂の入る余裕はある。
砂でいっぱいになっても水の入る余裕はある。
この話の言いたい事は
「どんなにスケジュールがいっぱいでも工夫すれば予定を入れることができる」
ということではなく、
「最初に大きな石を入れずに砂利を入れてしまえば
あとからでは決して大きな石を入れることはできない」
ということ。
些細な砂利はおいておき、まず人生の大石に着手することが重要。

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といったところでしょうか。

この2つの話、どちらも「順序」が大切だということを言っています。
これはこれでいい話なんですが、ただScienceじゃない点がちょっと困りものです。
そこでサイエンス絡みで「順序が大切」な話を探してみました。

希硫酸が欲しいのに濃硫酸しかないときはどうしましょう。
まず「理系」というだけで拒絶反応を示す人のために説明しておくと
濃は濃い・濃厚、希は希薄ということで
濃硫酸は濃い硫酸、希硫酸は薄い硫酸ということです。
ちなみに「希望」は望みがうすいということではありません。

ですから「濃硫酸を水で薄める」ことで希硫酸になります。
でも言葉通りに「濃硫酸に水を入れる」と大変なことになります。
正しくは「水に濃硫酸を入れる」ようにしなければ危険です。
「順序」というにはちょっと違うかもしれませんが。

これは学校の授業で聞いた、あるいは実際に実験した人もいるくらい
有名な話です。
でも「なぜ?」と聞かれると答えられますか?

濃硫酸と水を混ぜると発熱します。でもそれは濃硫酸に水を入れようが
水に濃硫酸を入れようが発熱量は同じはず。
考えられるのは水と濃硫酸で反応する量が違うということです。
水1cm3濃硫酸10cm3が反応するとすれば
同じように10cm3を加えたとしても
水10cm3を加えた場合、濃硫酸100cm3と反応し、
濃硫酸10cm3を加えた場合、水1cm3と反応する。
前者は後者の10倍の量だから発熱量も10倍です。
つまりもっと少量ずつ混ぜないと急に発熱してしまいます。
でもそんなことはなさそうです。

実際には発熱そのものより、それによって起こる突沸、大げさに言えば水蒸気爆発が危険です。
このとき飛び散るのは
水に濃硫酸を入れた場合、大量の水と少量の濃硫酸ですが、
濃硫酸に水を入れた場合、大量の濃硫酸と少量の水です。
どちらが危険かは一目瞭然です。

ですから、濃硫酸と水を混ぜるときには気をつけてください。
もっとも社会人になって濃硫酸と水を混ぜる機会はめっきり減ってしまいましたが。