宇宙旅行

どうも、新スタッフの濱口です。

予定通りアニメ「宇宙兄弟」の放送時間が変わることを記念して
おっさんの前世紀の文章『18.宇宙旅行』というネタをお送りします。
というより33年振りのテレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」の放送開始を記念して、
の方がしっくりきますね。

濱口は1978年公開の「さらば宇宙戦艦ヤマト」を当時好きだった人と観に行った思い出があります。
残念ながら二人きりではなく数人で行ったのですが。
その中に彼女の未来の旦那がいたのはご愛嬌。

テレビアニメとしては33年振りらしいですが、今回と同じ2199年が舞台のテレビアニメは
1974年放送ということで、39年ぶりということになります。
その39年前のアニメを見ていて、今回のアニメのTVCMを見た人は違和感を持ったと
思います。
かつてのアニメではイスカンダルまでは14万8,000光年だったはずなのに、
今回のアニメではイスカンダルまでは16万8,000光年。
2万光年も遠くなっています。

その答えはあさりよしとお先生の『HAL』という本にありました。
「宇宙は膨張している」

イスカンダルは大マゼラン星雲にありますが、
この本によれば1913年にヘルツシュブルングによって距離3万光年と特定された小マゼラン雲は
1999年現在、距離20万5,000光年にある。
アンドロメダ星雲にいたっては
1918年シャプレーの測定では距離17万5,000光年。
1923年ハッブルの観測では距離93万光年。
そして1999年現在、アンドロメダ星雲は230万光年の彼方にある。
すべて「10万光年」の単位で遠くなっています。

ちなみに月も年間数cm地球から遠ざかっているそうです。
遠い将来、地球から見る月は小さくなって皆既日食はなくなるかも。
いや、地球と太陽も遠ざかっているだろうから太陽も小さくなっているからわからないか。

ところでイスカンダルに関して、気がついている人は気付いているでしょうが・・・
はい、ウソをついていました。
そうです、39年前も今回も舞台は2199年なので、宇宙の膨張は関係ありません。

それではそろそろ、おっさんの前世紀の文章に移りましょうか。



宇宙旅行

かつて『サンダーバード』というTV番組がありました。その主人公たちである『国際救助隊』は、
なんと家族で運営(経営?)されています。その中心人物である『パパ』は
(物語の中では)『人類で初めて月面を歩いた男』なのだそうですが、彼は1970年の生まれだそうです。
実際に人類が月に到達したのは、彼が『生まれる』1年前ですから、番組製作者が考えもしなかった
すごい早さで一気に月まで到達したことになります。

しかし、ここでピタリと止まってしまいました。
月到達から30年もたちましたから、「月面には基地ができ、そこから火星・木星土星に向かって
有人宇宙船が飛び立っている」という状況になっていてもおかしくはないとも思うのですが、
実際には月面基地はおろか、現存唯一の有人宇宙ステーション『ミール』が財政難のため保守費用が
確保できず放棄され、地球以外に人間は常駐していない状況です(スポンサーさえいれば放棄せずに
存続させるらしいですが、どれくらいの費用なのでしょうか?)。

なぜこうなってしまったのでしょうか? たぶん月に何もなかったからではないでしょうか?
月まで行ったはいいが、得られたものといえば、『一番乗りの栄誉』と大阪万博で行列はできたが、
それ以上何の役に立つかといえば「研究材料にするくらいしかない『月の石』」の2つくらいでしょう。
「ここ(月)はアメリカの領土だ」と主張したという話も聞きませんし(あんな何もないところを
領土にしても意味があるかどうか、下手に領土を主張すると全世界の国々を敵に回すかもしれない、
ということは置いときます)、「持ち帰った月の石には金が5%含まれていた」とかいう、あわて者が
すぐにでも月に向かって飛び出していきそうな『おいしい』話も聞きません。
結局、巨費を投じて月まで行っても「行った」という事実以外得られるものは何もない。
これでは「月へ行こう!」という気持ちは失せてしまうでしょう。
「では次(の目的地)は火星だ」となれば盛り上がるのでしょうが、どうやら火星も月と似たような
ものらしい。しかも費用は月までに比べてさらにかかる。
「それでも火星に行くんだ!」という人はいなかったんですね。『生命の危険(生きて帰ってこられない)』の
可能性も月までに比べてはるかに大きいでしょうし。

とはいっても、宇宙に何も手をつけなかったわけではありません。
『宇宙ステーション』という形で長期間滞在することはありませんが、『スペースシャトル』で
宇宙に上がって1週間ほどして帰ってくる、ということは頻繁に行なわれています。
また、そのときに宇宙から電波を通じて子供たちに向かって呼びかけたりもしていますから、
昔に比べれば宇宙はずいぶん身近になったものです。

そしてとうとう『景品としての宇宙旅行』まで登場しました。費用は1千万円ちょっと
(たぶん10万ドルなのでしょう)で『景品法』の制限により1千万円超過分は
自己負担だったと思います。もし円安になって1$=¥150なんてことになれば自己負担は500万円・・・。
政治家の先生方ならいざ知らず、我々庶民には負担できない大金です。さらにスペースシャトル
空港(宙港?)までの旅費も自己負担だったはずですから、「景品もらって宇宙にいったけど、
借金ができて一家心中」なんてことになるかもしれません。やはり宇宙は『高嶺の花』です。

しかし、金さえあれば宇宙に行ける時代になったんですね。もっとも今回の『宇宙旅行』は
たかだか30分程度の『宇宙散歩』という方がしっくりくる(ただし、『宇宙散歩』といえば
宇宙を自由に動き回る、いわゆる『宇宙遊泳』を連想してしまいそうなのでやはり『宇宙旅行』に
しておきましょう)くらいの本当に『行って帰ってくるだけ』ですが。

でも、『行って帰ってくるだけ』とはいうものの誰でも宇宙に行けるようになったとはすごいことです。
一昔前の宇宙旅行というか、宇宙飛行士のイメージは『鍛えぬかれた頑強な身体と何者にも
屈しない強い意志を合わせ持つ選ばれた人間』てな感じだった(こう思っていたのは私だけ
でしょうか?)のですが。
今はまだ、訓練を受けた人間しか宇宙には行けないので、『人並みはずれた』とまでは
いかないまでも『一般人よりはすぐれた身体能力と精神力』が必要とされているようです。
「『宇宙酔い』がばれたら二度と宇宙には来れないかもしれない」と恐れて、血圧計などの
測定機の数値を見せなかった宇宙飛行士もいましたし。

さて今はともかく、あと10年以内くらいには『ごく普通の日常生活が営める身体機能』さえ
持っていれば、とりわけ我慢強くなくても、つまり厳しい訓練など受けなくても宇宙にいく
ことができそうな気配です。
しかし、ごく短時間宇宙にいるだけなら問題はないのですが、しばらく宇宙に留まる(たとえば
宇宙ステーションで1泊する)ならば、非常に大きな問題が立ちふさがります。

「訓練を受けていない人間が長時間、無重力環境下にいると変調をきたす」とかそういうことでは
ありません。本当に『変調をきたす』という説があるかどうかも知りません。そんなことでは
ないのです。
『立ちふさがる非常に大きな問題』とは、『飲料水』です。
「宇宙では水が貴重だ。だから喉が渇いたからといって好きなだけ飲むことはできない」ということでは
ありません(そういうこともあるかもしれませんが)。
『水が貴重だ』ということについてはその通りです。もし地球上から必要なだけの水を宇宙に運ぶとしたら
莫大な費用がかかります。『山頂の売店では120円の缶ジュースが300円で売られている』というのと
同じ理由ですが、おそらく缶ジュースは数万円になるのではないでしょうか?

ですから地球から水を運んだりせずに、使用済みの水を処理して再利用することになるでしょう。
そしてこの『水の再処理システム』こそが立ちふさがる大問題なのです。
再処理システムの原料はというと当然汚水です。もちろんおしっこも含まれます。
つまり、処理されているとはいえ、『おしっこを飲む』ということです。

もちろん頭では理解しています。
処理をして蒸留すれば、元がおしっこであれ何であれ、飲料水を作ることが、いや、それどころか
何の不純物も混じっていない純水すら作ることができます。
地球上でだって同じです。下水処理場で処理された水は川や海に放流され、太陽熱により蒸発し、
しばらくすると雨となって降りそそぐ。そして川や地下水となり、それを処理して飲料水にしている。
装置で処理するのも同じことです。

しかし・・・、
駄目ですね。やはり「これは元はおしっこだったんだ」と考えて飲めそうにありません。
たぶん、地球上では、川や海に放流された時点で非常に薄まってしまうので、『元がおしっこ』だと
意識しなくなるのでしょう。だからおしっこが飲料水になったとは感じない。でも限られた閉じた
空間(処理装置)の中で、おしっこを入れたら別の出口から飲料水が出てきたら、
おしっこが飲料水になったと感じてしまう。

こんな軟弱な考え方ではとても宇宙では暮らせません。
私には無理です。
やはり、宇宙に行くためには昔も今も、『強い意志』が必要なのです。

あなた、おしっこ飲めますか?



濱口はノーマルなのでおしっこは飲めません。
宇宙に行くことはないからおしっこを飲むことはないでしょうが、
最近は災害時用に「ドロ水を処理して飲料水にする」機械が発売されています。
それですら飲めるかどうか。もっとも生命の危険を感じたらそんなこと気にせずに
飲むんでしょうけど。

また、当時のレートは文章から判断して1ドル=110〜130円程度だったようですね。
「円安」と言われている現在のレートよりさらに安かった。

ところで今回出てきたあさりよしとお先生、特定の世代の人には
学研の学習雑誌の「まんが・サイエンス」の作者として有名だと思いますが、
彼は「アステロイド・マイナーズ1」という本の中で
「おしっこ(を処理した水)を飲む」ことに言及しています。
ちなみに濱口の世代の学研の科学漫画は故・(石ノ森と名乗る前の)石森章太郎先生が
描いてました。

今回またおっさんの文章で埋めたわけですが、
世間一般では「人のふんどしで相撲をとる」というようにあまりほめられたことでは
ありません。
しかしそれを推奨している分野もあります。
プログラミングの世界です。
「ライブラリ」あるいは「フレームワーク」と呼ばれる他人の作った部品を使って
自分のプログラムを作ることが推奨されています。
非道い時には、自分で作ったプログラムに対して
「なぜライブラリを使わないんだ」とまで言われる始末。

そこまでライブラリが信用されているのは皆が使ってバグを洗い出しているからです。
多くの障害情報が集まり、それを修正することで完成度が上がっていく。
「数は力なり」というやつです。

ちなみにおっさんの文章は書かれたときの(改行位置は調整してますが)そのままを
載せてます。つまり「ライブラリ」とはほど遠い。
使わない方がいいのかも!?